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BMXライダー|中村 亮太さん

夢をあきらめない。若者が楽しめるストリートカルチャーで街に貢献したい、という一人のBMXライダーの物語。

01.プロフィール

BMXライダー

1991年、周南市生まれ。15歳のとき、地元の公園で出会ったライダーの姿に衝撃を受けてBMXに乗り始める。徳山商工高等学校機械科卒業後、下松市のメーカーに就職。会社勤めの傍ら練習を重ね、2020年より山口県で唯一、全日本BMXフリースタイル選手権フラットランド種目で最高レベルとなる「エリートクラス」に参戦。県内屈指の実力の持ち主として、各種コンテストをはじめ、県内外のイベントにも参加。2021年11月、専用練習場「CARTEL BMX Park」を開設。体験会や個人レッスンなどを通じて後進の育成にも力を注ぐ。

02.モノとコト

注目を集めるBMXフリースタイル
BMX(バイシクル・モトクロス)とは自転車競技の一種。BMXのはじまりは諸説ありますが、1970年代初頭のアメリカで、オートバイのモトクロスレースに憧れた子どもたちが、ダート路(荒れた土の路面)に作ったジャンプ台や板の上を自転車で走って遊んだことが原点とされています。BMXのカテゴリーは大きく分けて2つ。速さを競う「レース」と、華麗な技を競う「フリースタイル」があります。BMXフリースタイルは、東京2020オリンピック競技大会で新しく正式種目に追加されたことでも話題になりました。日本におけるBMXの主な大会は、年に1回開催される全日本選手権自転車競技大会、そして年に5回開催されるJBMXFシリーズ。こうした大会を通じて競技人口が増える一方で、ストリートカルチャーとしても広がりを見せています。

トリックやスピンで魅せるフラットランド

今回ご紹介するのは、周南市出身のBMXライダー中村亮太さん。彼が専門とする「フラットランド」は、BMXフリースタイル競技の一種です。舗装された平らな面で、足を地面につかないようにバランスをとりながら、アクロバティックなトリック(技)やスピン(回転)を組み合わせ、その難易度や芸術性を競う競技です。車輪の左右にあるペグと呼ばれるステップに足をのせたり、ペグを手で持ったりしながら、さまざまな体勢で車体を保持し、タイヤを靴底で擦るなどして、自転車を巧みに乗りこなします。このBMXフラットランド、プロバスケットボールBリーグのハーフタイムショーで披露されるなど、パフォーマンスとしてもとても人気があります。また、2024年のパリ五輪からBMXフラットランドが採用される可能性もあり、スポーツとしての期待の高さがうかがえます。

通常の自転車との違いは?
BMXのホイールは直径20インチ、重さは約10kg。普通の自転車に比べてコンパクトで小回りが効くようになっています。フラットランド用のBMXは、タイヤの横にペグと呼ばれるステップがついており、そこに乗ったり、手で持ったりして技を繰り出します。通常の自転車と大きく違うのは、ハンドルバーがくるくると回ること。技をする上でブレーキのケーブルが絡まないような構造になっています。ちなみに中村さんのハンドルにはブレーキがついていません。まさに競技に特化した仕様です。中村さんはハンドルやペグなどのパーツごとに買い揃え、理想の一台を組み上げているそうです。

まるでフィギュアスケートのような華麗さ!
中村さんが得意とするのはスピン系のトリック。早速、得意技の「ロンモアスピン」を披露してもらいました。ぐるぐると走りながら、一瞬で右手は左ハンドルバー、左手は前輪のペグへ。車体のバランスをとりながら、後輪のみを走らせて回転します。スピン中にさらに加速して、スゴ技がどんどん繰り広げられて…見ているこちらの目が回りそう。華麗に回転するその姿は、まるでフィギアスケートを見ているかのようです。「BMXを乗りこなすことで、体幹やバランス感覚、筋力も自然と鍛えられます。1週間でできるようになる技もあれば、1年くらいかかるものもある。壁を乗り越えるのは難しいけれど、できたときの達成感は格別です!」遊びが原点のBMXなだけに楽しみ方は無限大。複雑なトリックの組み合わせは、エンターテインメント性が高く、個性が出しやすいのが大きな魅力です。

03.インタビュー

03.インタビュー
BMXライダーとの出会いが人生を変えた
小さい頃から自転車が好きだったという中村さん。中学生のときにマウンテンバイクに乗り始め、公園で段差を上り下りするなどして遊んでいたそう。BMXを初めて間近で見たのは中学3年生のとき。地元の公園で運命的な出会いがありました。「自転車を自在に操り、次々に技を繰り広げるライダーを見かけて、めちゃくちゃカッコいいなと思って。思い切って、どこで自転車を買えばいいのか、どんな技があるのかを聞いてみたんです。」翌日、紹介されたお店に駆けつけてBMXバイクを購入。その先輩ライダーと一緒に練習に明け暮れる日々がスタートしました。

プロライダーの技に衝撃を受けて
放課後や休みの日の居場所は、もっぱら周南市内にある「周陽公園」か「キリンビバレッジ周南総合スポーツセンター(前の広場?)」。高校時代もひたすら練習を続け、さまざまな技を身に付けていった中村さん。本格的にスイッチが入ったのは、初の世界タイトルを獲得したプロBMXライダー・内野洋平さんの映像を見たことがきっかけでした。「後輪を軸にして連続で回転するオリジナル技“ウッチースピン”に大きな衝撃を受けました。自分も高度な技を身に付けて、いつか世界大会やショーで活躍したい。」中村さんの夢は大きく膨らんでいきました。

ブランクを経てコンテストやイベントで活躍!
中村さんは、高校を卒業後、会社員として働きながら、趣味としてBMXを続け、19歳からは大会に出場し始めるようになりました。「それまでは自分のレベルがどのくらいなのかが分からなかったのですが、コンテスト初出場にしていきなり全国大会の最上位クラスに参戦することに。そこで、周りのレベルの高さに驚愕しました。」そして、仕事が忙しくなるにつれ練習時間が思うようにとれず、技の上達に伸び悩み、次第にBMXから遠ざかっていったといいます。

ブランク期間を経た後、転機となったのは2018年に開催された「山口ゆめ花博」。先輩ライダーから声を掛けられて、久々にBMXのショーに参加しました。そこで痛感したのは、やっぱりBMXが好きだということ。「夢をあきらめきれない。もう一度BMXをやりたい! 人前で自分を表現する楽しさに目覚め、きちんとやってみようと心に決めました。そこから本格的にコンテストシーンに身を置くようになりました。」平日は職場から公園へ直行。休日も練習に費やし、得意のスピンを磨き続け、2020年、遂に全日本選手権への参戦を果たします。現在、このクラスに挑戦するのは県内では中村さんしかいません。「今年も参戦しました。入賞は果たせませんでしたが、最後に納得のいく1本を決めることができて、確かな手応えを感じました。」来年への期待が高まります。

若者文化をいかしたまちづくりに貢献
生まれも育ちも周南市という中村さん。まちへの思いを聞いてみました。「やっぱり地元が一番落ち着きますね。とても居心地のいいまちです。でも、ほかの都市と同様に、周南市も少子高齢化という課題を抱えています。若者がここに住みたいと思えるような文化が根付けば、若者の県外流出や人口減少を防げるかもしれません。たとえば、大規模なスケートパークが整備されれば、県内外からたくさんの人を集めることができるのではないでしょうか。いろいろな人とのつながりを通じて、若者が興味を持ちそうなBMXなどのストリートカルチャーが楽しめるまちづくりに貢献していきたいと思っています。」まだできあがっていないからこそ面白さがある。自分の力で変えていくことができる余白がある。中村さんの言葉からは、先駆者としての思いが感じられます。

後進の育成にも力を入れていきたい
中村さんは、選手として競技の世界で活躍する一方、県内唯一のBMXのショーチーム「CARTEL Labo(カーテルラボ)」のメンバーの一員としても活動し、イベントなどを通じてBMXの魅力を広めることにも力を入れています。また、2021年11月にはBMX専用練習場「CARTEL BMX PARK」も開設。体験会や個人レッスンなどを通じて、後進の育成にも力を入れていきたいと意気込んでいます。
最後に、これからの展開について次のように語ってくださいました。「山口のBMXシーンはまだ規模が小さく、課題がたくさんあります。しかし、最近は全国的にレベルの高いジュニアが増え、徐々に機運が高まりつつあります。自分が夢中になることができたように、もっとたくさんの人にBMXの楽しさを知ってもらいたい。そして、できれば世界レベルまでいける選手を育てていきたいと思っています。そのためにも、BMXを体験できる機会の提供や環境づくりに貢献していきたい。BMXを通じて少しでも地域に恩返しができればいいなと思っています。」さらに高みを目指して、中村さんの挑戦はこれからも続きます。

04.関連リンク

記事:小野 理枝/ 写真:川上 優

執筆時期:2021年11月

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