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高下正明(ラボ・コンタンポラン主宰、周南美術連盟会長、山口芸術短期大学特命教授)

高下正明(ラボ・コンタンポラン主宰、周南美術連盟会長、山口芸術短期大学特命教授)
01.プロフィール

1958年、広島県佐伯郡大野町(現在の廿日市市大野)生まれ。山口大学教育学部卒業。中学校教員として美術を教える。アートとテクノロジーを融合した作品づくりに取り組み、2007年から「周南市美術連盟展」に毎年出品。2010年、周南美術連盟の会長に就任。2018年に教員を退職、「ラボ・コンタンポラン」を立ち上げ、アプリの開発やデジタルコンテンツの作成、子ども向けの美術・デザイン・プログラミング教室、出前授業、展覧会などを開催。近年は、デザイン思考のプロセスをまちづくりに応用したさまざまなプログラムにも参加。周南市を中心にクリエーティブな人材育成に力を注ぐ。

02.モノとコト

「できた」「面白い」「楽しい」を原動力に
ラボ・コンタンポラン

秋雨が通り過ぎたある日の午後、周陽中学校で開催された「働く人に学ぶ会」の授業にお邪魔しました。クリエーター領域の講師を担当したのは、「ラボ・コンタンポラン」を主宰する高下正明さん。映像クリエーターとして作品づくりに取り組みながら、子どもを対象とした美術・デザイン・プログラミング教室やワークショップを展開しています。

「ラボ・コンタンポラン」とはクリエーティブな人材育成を目的とした、子ども向けの美術・デザイン・プログラミング・電子工作の教室。子どもたちの個性や感性をひろいあげ、自己肯定感を高めるプログラムを展開しています。iPadのアプリを使って作曲や映像づくりに挑戦したり、3Dプリンターなどのデジタルファブリケーションを使ってものづくりを体験したりと、一人ひとりの「やってみたい」に寄り添いながら、主体的に課題を発見し、解決する力を養います。ちなみに「コンタンポラン」とは、フランス語で「同時代人」という意味。昭和に育った人が令和に育った子を教えるのではなく、同じ令和に生きている人が共に考えるという発想のもと、教科のジャンルを超えた分野横断的な学びを楽しみながら、個々の可能性を広げる一歩をサポートしています。

03.インタビュー

「何が成功するのかわからない時代。自分の可能性を信じて、新しい道を切り拓いてほしい」と熱く語る高下さんに、これまでのことやこれからのこと、周南市の未来などについてお話を聞きました。

学びはまちのなかにあふれている
私は広島県の宮島の対岸にある大野町(現在の廿日市市大野)で育ちました。子どもの頃からアニメや漫画が大好き。周りから褒められるのが嬉しくてしょっちゅう絵を描いていました。中学時代によく出かけていたのは、海の向こうにある宮島水族館。「学校以外にもこんなに面白いところがあるんだ」と、見るもの、聞くものに毎回ワクワクしていました。水族館の飼育員さんから「電気ウナギのエサがない」と聞けば、ドジョウをつかまえに川に出掛けたり、英語に長けている学芸員さんからは勉強を教わったり…。水族館に限らず、とにかく興味がわいた場所に足を運んでは、大人の話を聞くのが好きでした。こうした実践的な学びを体験できたのは、地域の中に鍛冶屋や大工などの職人をはじめ、一通りの店が揃っていたから。そうしたまちの人と接することで、社会の仕組みやものの見方を知り、他人との関わり方を身に付け、自分なりの答えを導き出す。そんな社会勉強が自然にできていたのだと思います。

教科の枠を超えた総合的・横断的な学び
大学を卒業後、中学校の美術教員として働き始めました。今思えば、「子どもたちと社会との接点をつくりたい」という想いから、教員になったといえるかもしれません。しかし、当時の学校教育は、従来型の教科学習がスタンダード。地域でのボランティア活動を提案するも、高校入試に関係ないことに時間を割くのは無駄、と考える人が大半でした。美術の授業に関していえば、その子が何を感じ、考えたのかよりも、知識や技術を用いた成果物ばかりに焦点が当たってしまうことに、ずっと違和感を持っていました。転機となったのは、ある中学校に異動したとき。ちょうどiMacが導入され、メディア・リテラシー学習が始まったばかりでした。そこで、先鞭をつけようと意気込んで、音楽の先生と一緒に美術と音楽を融合した総合的・横断的な学びを試みました。その一つが、サウンド・マップづくりです。子どもたちと一緒に校内の音を調べて地図に記入し、そこに録音した音とデジタルカメラで撮影した景色とを貼り付けてiMacで編集し、映像を使って自分の思いや主張を表現する方法を模索しました。しかし、マルチメディアを教育現場に導入しようとすると、「教育にはアナログの方が大切だ」「ほかに指導できる人がいない」といった声が寄せられて…。理想と現実のギャップに苦しみました。やはり自分が理想とする教育を学校だけで完結するには限界がある、そう感じていました。

教育とは、共に考え、教え合うこと
あるとき、現代音楽集団の最高峰と称される「アンサンブル・アンテルコンタンポラン」のワークショップを見学する機会がありました。子どもたちに自由に楽器を叩かせて、音楽を一緒に創りあげていく。そのプロセスを目の当たりにして「これだ!」と思ったんです。つまり、教育とは「教える」ことではなくて、「共に考え、教え合う」ことなのだと。そこで、自分が理想とする教育を実践するために、「ラボ・コンタンポラン」を立ち上げて、子ども向けの美術・デザイン・プログラミングのワークショップや教室を始めました。

教える上で大切にしているのは、子どもたちの感性です。たとえば、曲づくりに取り組んでいて、テンポが速くなったり遅くなったりしても、正すことはしません。なぜなら、思い通りのものが「できた!」という達成感を大切にしたいからです。それが、子どもたちの自己肯定感を高め、やがて主体的に課題を発見し、解決する力につながっていくものと信じています。

地域のイベントにも積極的に参加
近年は、周南市でおこなわれているさまざまなイベントにも参加しています。
2018年から始まった「クリエイティブキッズキャンプ」では、地域の教育機関、企業、クリエーター、学生ボランティアと一緒に、プログラミングやデザインなどのさまざまなワークショップをおこなっています。今年は、コロナの影響で少人数限定での開催となりましたが、たくさんのお申し込みをいただき、とても嬉しく思いました。
また、「周南デザイン会議」のメンバーとして、クリエーターのネットワークづくりにも力を入れています。2021年7 月の「山口クリエーターズトークvol.1」では、山口県在住のイラストレーターを招いてトークイベントを開催。今、活躍中のクリエーターの考え方やアイデアを共有する貴重な機会となりました。

2021年8月に開催された「みずべの美術館2021」では講師役を務めました。今回は、フグはえ縄漁発祥の地として知られる粭島を舞台に、地元の小学校の児童が海岸を清掃して、そこで拾ったゴミなどを組み合わせてアート作品づくりに挑戦。子どもたちのアイデアあふれる作品を海岸に展示しました。学校の授業でゴミ問題といってもピンとこないかもしれませんが、こうして海に出掛けて作品づくりをすることで、より身近な問題として捉えられたのではないかと思います。周南市には、鹿野の清流や大津島など、さまざまな水辺があるので、今後の展開が楽しみです。

デザイン思考でまちを活性化させる
コロナ禍により、人々の価値観は大きく変わりました。「遠くに行って何か特別な体験をしよう」というよりも、「近場で集まって他の人にはできないような楽しいことをやろう」という方向にシフトしています。こうした中、注目されるのが「デザイン思考」です。物事をじっくり観察して、違った角度から見て再定義し、そこに新しい価値を与える。どのような価値を感じられるのかが重要になってきました。

周南市には魅力的な「もの」や「こと」がたくさん眠っています。1300年前から和田三作地区に伝わる「三作神楽」や、海を渡る神輿として知られる粭島の「貴船神社夏祭り」などの伝統も生き続けています。そして、一番の魅力はそこに住んでいる「人」。「まちを盛り上げたい」「面白いことを企画してみたい」「周南市のために何かしたい」というポジティブなエネルギーをもつ人が、年々増えている印象を受けます。そうした人々と共に、デザイン思考で、地域の課題を解決し、新たな価値をどう創り出せるのかを探っていきたいと思っています。

周南市の文化を育てるために
文化を育てる。そのためには、有名な賞をとる人をたくさん輩出することではなく、「アートって面白い!」「面白い体験をして良かった!」と思える人を10人でも20人でも増やすこと、そして作品を発表する場を増やすことが重要だと思っています。可能性の種はたくさん転がっています。個々の「やりたい」に背中を押して、どう価値づけていけるかが、私に与えられた役目。人々と「楽しさ」を共有することでゆるやかなコミュニティが形成され、そこから新しいものが生まれていけば、やがて周南らしい文化として根付いていくのではないでしょうか。

04.関連リンク

記事:小野 理枝 / 写真:川上 優
執筆時期:2021年9月
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