インタビュー
周南のつくり手
Les MonCoeur(レ・モンクール)オーナー|福田亜加音さん
大切な人との大切な時間をより特別にするケーキを届けたい!

1980年、山口県周南市に生まれる。高校を卒業後、大阪の製菓専門学校で菓子作りを学んでUターンし、両親が営む洋菓子店「ミニヨン 手作り工房カワムラ」をパティシエとして支える。2020年に経営を引き継ぎ、2021年8月に屋号を「Les MonCoeur(レ・モンクール)」と改めリニューアルオープン。プライベートでは5人の子育てに奮闘。趣味は菓子作りやパン作り、料理、手芸などのものづくり。海釣りも好きで、自ら船を操縦して沖に出ることも。
モノとコト
誕生日、クリスマス、結婚祝い…。みなさんはどんな時に、どんな人と一緒にケーキを食べますか? 今回はアレルギー対応ケーキやオリジナルケーキ、わんちゃん用ケーキなど、大切な瞬間をより特別なものにするためのケーキ作りに挑戦する洋菓子店「Les MonCoeur(レ・モンクール)」をご紹介します。
親子二代にわたって愛される周南市の名洋菓子店

「Les MonCoeur」は周南市秋月にある洋菓子店。世界に一つだけのオリジナルケーキやアレルギー対応のケーキ、飼い主も一緒に楽しめるわんちゃん用のケーキなども提供し、“想いをカタチにしてくれる洋菓子店”として人気を集めています。
店のオーナーは生まれも育ちも周南市の福田亜加音さん。実はこの洋菓子店の前身は、福田さんの両親が2001年にオープンし、20年以上地域に愛された「ミニヨン 手作り工房カワムラ」。高校を卒業して大阪の製菓専門学校で菓子作りを学んだ福田さんが店を引き継ぎ、2021年に「Les MonCoeur」としてリニューアルオープンしました。
三角屋根が特徴的な建物はそのままですが、カラーリングは一新。黄色と緑を基調とし、外観はすっかり生まれ変わりましたが、提供しているケーキや焼き菓子は先代のレシピがベースとなっており、変わらず通い続ける常連客がたくさんいます。
アレルギーのある方にもケーキのおいしさを届けたい!


「Les MonCoeur」の店頭には、20〜25種のケーキ、約60種の焼き菓子が常時並びます。そして、その中にはアレルギー対応のケーキや焼き菓子も。卵や牛乳、小麦粉など、いわゆるアレルゲンを抜いた菓子作りを始めたのは今からおよそ20年前で、福田さんの母親でもある初代が、「子どものために卵と乳製品を使わないケーキを作ってもらえないか?」とお客さんに相談されたのがきっかけだったそう。
「お客さんの話を涙ぐみながら聞いていた母の姿を今も覚えています。話を聞き終わった母は、試行錯誤しながら必死にレシピを考案していました。まだアレルギー対応のケーキや焼き菓子がそんなに普及していない時代だったので、材料の研究から始めるものすごく大変な作業だったと思います。」
実は初代の菓子作りは完全なる独学。それにも関わらず、自分の感覚とこれまでの経験だけを頼りにアレルギー対応のケーキを作り上げたそうです。
「母は本当に手先が器用で、料理も菓子作りも大得意。しかも、いつも楽しそうに作っていました。今思えば、学んでいないからこそ、何にも縛られず自由な発想でお菓子作りができたのかもしれません。そして、その自由な発想があったからこそ、アレルギー対応ケーキが完成できたのではないかと思います。」
初代が作り出したアレルギー対応ケーキはやがて評判となり、食物アレルギーに苦しむ人たちがたくさん足を運ぶようになりました。そして、そのレシピは受け継がれ、今は福田さんが改良し、アレンジを加え、お客さんのもとに届けています。
お客さんを笑顔にする世界にひとつだけのケーキ

「Les MonCoeur」といえば、オリジナルケーキも看板商品。お客さんのリクエストに応じ、デコレーションケーキや立体ケーキなど、これまで「世界にひとつだけのケーキ」を数えきれないほど作ってきました。
「デコレーションの参考にするのは、お客さんからいただいた情報のほか、SNSにアップされる画像など。ケーキや焼き菓子だけでなく、人気を集めているいろんなものにも目を通して、デザインのヒントやアイデアをもらいながら、『自分だったらこうするな』など感性を磨いています。」
立体ケーキは、お子さんやご両親、友人の顔、アニメのキャラクター、動物、乗り物など、リクエストは本当にさまざまなのだとか。
「立体ケーキはスポンジを組み合わせて基本の形を作ります。ですから、全体のイメージが固まったら、どう組み合わせていくかを考えなければなりません。いかにイメージ通りに形作るかだけでなく、いかに無駄なくスポンジを組み合わせるかも重要。実際に作り始めたらあっという間ですが、前段階の“考える作業”は大変です。でも、ものすごく面白くてやりがいがあります。」
お客さんのリクエスト通りのケーキを作るのは、決して簡単なことではありません。場合によってはアレルギーに対応するために、使う材料から考えなければならない時もあります。それでもオリジナルケーキ作りを続ける理由を福田さんにお聞きしました。
「ケーキは特別な日に大切な人と食べられることが多い食べ物。その特別な日を、もっと特別にしたい、より素敵な時間にしたい、そんな想いを込めて作り続けています。それに、ケーキを受け取ったときのお客さんの嬉しそうな顔を見た時や、『おいしかった!』という言葉を聞いた時に、絶対にやめられないなって思うんです。」
ちなみにこれまでで一番大変だったのは、船の形をしたウエディングケーキだったそう。戦艦大和が大好きな新郎からのリクエストで、軍艦の形を調べるところから始めたのだとか。完成したウエディングケーキに新郎新婦は大喜びだったそうで、苦労の甲斐があったと福田さんはやさしい笑顔で話してくれました。
店名はフランス語で「私の大切な人たち」 ケーキで大切な人たちを幸せに

リニューアル後の店名「Les MonCoeur」は、フランス語で「私の大切な人たち」を意味します。
「私の中でケーキは大切な人にプレゼントするもの。私にとってお客さんはみんな大切な人だから、複数形にして“大切な人たち”としました。」
2025年12月、「Les MonCoeur」は、周南市久米の商業施設内にも店舗をオープン。この久米店は福田さんの夢をかなえるための大きな一歩です。
「私の夢は、アレルギー除去のケーキがどこでも手軽に買えるようにすること。ケーキは世の中になくていいものかもしれませんが、一瞬だけどホッとさせてくれるし、疲れた時には癒しを与えてくれます。ケーキがもたらす幸福感を、アレルギーの人も含め、一人でも多くの人に届けるために、今後も提供する場所を増やしていきたいです。」
家族も楽しめるわんちゃん用ケーキや季節の素材をふんだんに使った限定ケーキなど、「Les MonCoeur」には多彩なケーキや焼き菓子がそろっています。

「焼き菓子の人気ナンバーワンは、アレルギー対応の『使っちょらんクッキー』で、ふるさと納税のお礼の品にもなっています。季節限定ケーキはやっぱり春のイチゴが人気。熊毛の農園から仕入れたものすごく甘いイチゴを使っているので、毎年即完売状態です。」
福田さんが菓子作りを続ける理由は、「一口食べた時の『うわぁっ!』という顔が見たいから」だそう。そのため、材料の仕入れにもこだわり、害を与えるものはもちろん、安全性に少しでも不安を感じるようなものは一切使用しないと断言します。
一つひとつ思いを込めて作られる「Les MonCoeur」のケーキや焼き菓子は、今日も誰かを笑顔にしています。
インタビュー
両親から店を引き継ぎ、洋菓子店「Les MonCoeur」を経営する福田亜加音さん。パティシエに憧れた理由やこれまでの道のり、将来の夢、周南市への想いなどを存分に語っていただきました。
料理も菓子作りも得意な母親は憧れの人
小さい頃から食べることが好きで、「いつか自分の店を持ちたい」と思っていた杉さん。休みの日は、母親と一緒にお菓子を作るのが楽しみだったそうです。
「クッキーやプリンなど、色々なお菓子を作った記憶があります。なかでも印象に残っているのはチョコレートケーキ。簡単なレシピでしたが、家族から『おいしい!』と言われて、すごくうれしかったのを覚えています。」
顔の見える関係の中ではぐくまれた絆
子どもの頃、どちらかといえば人見知りだったという福田さん。家で遊ぶことが多く、母親と一緒によく菓子作りもしていたそうです。
「母は本当に料理も菓子作りも上手で、父が家に知り合いを招いたら食べたいものを聞き、その場にある食材でササッと作っていました。母の料理や菓子を食べた人たちが、たちまち笑顔になる様子を見て育ちましたから、私の夢は幼稚園の頃からケーキ屋さんを開くこと。今こうして洋菓子店をやっているのも母の影響がものすごく大きいと思います。」
母親の趣味が高じて、福田さんが小学校低学年の頃に両親はケーキの卸売店を開業。学校が終わると真っ直ぐ家に帰り、仕事を手伝うのが日課だったそうです。

「卵を割ったり、洗い物をしたり、床を掃除したり…と、子どもができる範囲のことではありますが、毎日お手伝いしていました。『早く帰ってあれをしなきゃ、これをしなきゃ』って、とにかく母を楽させることばっかり考えている、今思えばちょっと変わった小学生でした(笑)。」
休日は両親に連れられて貝掘りやキャンプに行くこともあったそう。徳山動物園へもよく足を運び、ダチョウに餌をあげたり、馬をなでたりと動物と触れ合うことも多かったのだとか。
「この頃は卸業だったので割と自由で、家族と遊びに行く時間もありました。日頃はインドア派でしたが、自然の中で遊ぶのは結構好きでしたね。たくさんの思い出を作ってくれた両親には感謝しています。」
福田さんが高校生になった頃、両親はテナントを借りて喫茶店兼ケーキ店を開業。学校が終わると店に直行し、相変わらず母親を手伝っていた福田さんですが、高校卒業と同時に大阪へ。「いずれ実家の店を継ごう」、そんな想いからの進学でした。
「大阪には菓子作りを学ぶという目的で行って、最初から卒業後は周南市に帰る予定でしたから、寂しいとか実家が恋しいとかそういった感情はほぼありませんでした。身につけた技術や知識が両親のために役立てばいいなと、いつもそんなことを考えていたような気がします。」
2001年に両親はテナントを出て、念願だった自分たちの洋菓子店「ミニヨン 手作り工房カワムラ」を開店。専門学校を卒業してUターンした福田さんも店を手伝い始めました。
5人の子育てに奮闘しながらも、
大切な場所を守るために経営者に 大切さに気づいたきっかけ
両親の店を手伝い始めた福田さんですが、すぐに第一子を妊娠。実家を継ぐという目標からは、必然的にしばらくの間遠ざかることになりました。ちなみに、福田さんは5人のお子さんを持つ母親でもあるのです。
「子どもが小さいうちは、毎日が運動会みたいな日々を送っていました。実家の店を継ぐ気も一時期はなくなり、脳も行動も子育てに完全にシフト。店に出られるか、出られないかは子どもたち次第です。ですから、ある程度落ち着くまでは、子育てに集中する期間があったり、店を手伝う期間があったりと、そういう関わり方をしていました。」
しかし、今から16年前に母親が他界。父親が店を担うことになり、福田さんは店を手伝わざるを得ない状況に。しばらくの間、父親と妹と親子3人でどうにか店を切り盛りしていましたが、子どもたちが進学する時期を迎えて福田さんは再びお休みすることになりました。ところが今度は父親が病を患い、店は存続の危機に陥ります。「店を継続すべきか、畳むべきか…」、悩む福田さんに声をかけたのが、福田さんの夫でした。
「『やりたいんだったらやってみれば?』と夫に背中を押されました。地域の人たちがうちのケーキを愛してくださっているし、働いているスタッフたちもみんな続けたがっている。私自身ももちろん愛着があるし、夫もああ言ってくれている…。だったら、みんなの大切な場所を守ってみようかなと、経営を引き継ぐことを決めました。」
経営者になって広がった夢経験から 見つかった新たな挑戦

2020年に「ミニヨン 手作り工房カワムラ」のオーナーとなり、翌2021年に「Les MonCoeur」としてリニューアルオープンさせた福田さん。アレルギー対応のケーキや焼き菓子をもっと多くの人に届けたいと、2025年12月に周南市久米の商業施設内にも店舗を増やし、経営は順調です。最近ではこれから挑戦したいことも見つかったそうです。
「挑戦したいのは、流動食の方でも食べられるケーキの開発です。父はすごく甘いものが大好きで、症状が進んで流動食になってもケーキを食べたがりました。さらに進行して点滴だけになっても、『何か甘いものが食べたい』と言っていたんです。父のような人はきっともっとたくさんいるはず。だからいつか、その願いをかなえたいんです。」
子どもたちがずいぶん大きくなったとはいえ、仕事に家事にと忙しい毎日を送る福田さんですが、菓子作りへの情熱は冷めることがなく、むしろ常に「その先」を見つめています。
育ててくれた周南市に恩返しを
福田さんはECショップで「Les MonCoeur」の菓子を全国に届けていますが、今後も周南市を拠点に展開していく予定です。その理由は、生まれ育ったまちへの愛着だけでなく、ケーキ作り以外にも周南市でチャレンジしたいことがあるからだとか。
「いつか子ども食堂を開きたいと思っています。5人も子どもたちを育ててきましたから、いろんな境遇のお友だちにも会ってきました。『周南市にはすでに子ども食堂があるんだから、そこを手伝えばいいじゃないか』と思われる方もいるかもしれませんが、子ども食堂はどこも毎日営業しているわけではありません。だから、食べられる場所自体を増やすことで、子どもたちが食べられる回数を増やしたいんです。」 福田さんはこれまでも寄付や里親という形で、地域の子どもたちの貧困問題に向き合ってきましたが、自分にできる方法で解消に取り組むには「食の提供」が一番ぴったりだと考えたそうです。

「両親も私も、私の子どもたちも周南市で生まれ、育ち、地域のみなさんに支えられて今日があります。おいしいケーキや焼き菓子を提供すること、流動食の方でも食べられるケーキを開発すること、子ども食堂を開設すること、これらは全て地域への恩返しにもつながると思っています。大好きなまちですから、もっといいまちにしたいんです。」
昔から疲れた時、ふっと肩の力を抜きたい時、福田さんは周南市の夜景に癒されてきたそうです。そして、海釣りに出かけたり、山に山菜を採りに行ったりと、家族の絆を深めてくれたのは周南市の自然だと言います。
「子どもたちはパティシエにはなりそうにないけど…」と笑いながら故郷の風景を見渡す福田さんのその表情は、深い周南市愛にあふれていました。ぜひ一度、「Les MonCoeur」のケーキを味わってみてください。愛情がたっぷりと込められたケーキは、きっとあなたをやさしく包んでくれるはず。

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執筆時期:2025年1月
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