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文化湯|高原 彩さん 、高原 舞さん

4代続く老舗銭湯の看板娘。家族の力を結集した新たな取り組みに注目!

文化湯|高原 彩さん 、高原 舞さん
01.ヒト

文化湯高原姉妹1995(平成7)年、周南市生まれ。姉・彩さんと妹・舞さんの双子姉妹。小学3年生から徳山卓研スポーツ少年団で卓球を習い始め、全国ホープス卓球大会団体で全国3位に輝く。中学3年生から二人揃って卓球強豪校である高知県の土佐女子中学高等学校へ進学。インカレの常連校として実積を誇る高知工科大学に入学し、全国国公立大学卓球大会で団体6連覇、シングルスやダブルスで優勝を果たす。勉学にも励み、卒業時には二人とも文武両道の模範学生として「アスリート特別優秀賞」や「学長賞」を授与される。その後、彩さんは地元の銀行に就職。舞さんは大手製菓会社に就職し、東京支社に配属。2020年に舞さんがUターン。翌年、彩さんも銀行を退職し、家業である銭湯「文化湯」の運営を手伝うようになる。現在、手づくりお菓子や地元の衣料品店とコラボしたTシャツの販売など、新たな取り組みに奮闘中。

小学6年生のとき、全国ホープス卓球大会で団体3位の成績を収める

02.モノとコト


湯気に包まれた懐かしい光景
湯船に張られたたっぷりの熱いお湯、浴場に響くかけ湯の音、風呂上がりのフルーツ牛乳…かつてはどのまちにも夕焼けに湯気を立ち上らせる銭湯がありました。老いも若きも等しく裸の付き合いができる銭湯は、地域の語らいの場。人々はここで他愛のない話をしながら、一日の疲れを癒し、明日への活力をもらっていました。
JR徳山駅から徒歩10分。周南市戎町にある「文化湯」も、そんな昔ながらの銭湯。旧徳山市内にたった一軒残る公衆浴場です。男湯、女湯ともに中央に楕円形の浴槽がひとつ。ヨーロピアン調のモザイクタイル模様がレトロな雰囲気の中、新しい風情を醸し出しています。


銭湯開業は地域への恩返し
「文化湯」の創業は1953(昭和28)年。オーナーである高原 保さんの祖父・保作さんと父・茂さんによって開かれました。シベリア抑留で肺結核に侵された茂さんが帰国後、治療によって奇跡的に一命をとりとめたことから、「地域に恩返しをしたい」という思いで、県内の傷痍軍人やそのご家族の処遇改善のために山口県傷痍軍人会の会長を60年務められました。そして、自分と同じように戦争で傷を負った人々を癒したいという奉仕の精神から銭湯を始められたそうです。最初に番台に座ったのは保作さんの妻・ウメさん。60年近く銭湯を切り盛りしてきたのは、茂さんの妻・美和子さんです。徳山最後の一軒となるまで続けてこられたのは、間違いなく美和子さんの功労によるところが大きいといえます。その間、東京からUターンした保さんと妻の伊都子さんが引き継ぎ、現在は双子の彩さんと舞さんも加えた家族4人で切り盛りしています。

傷痍軍人会を支える高原 茂さんは2012年に旭日双光章を受章


古き良き銭湯文化を絶やさないために
銭湯を維持していくのは並大抵のことではありません。銭湯は、公衆浴場法によって管理されており、主な収入である入浴料は、銭湯業者が独自で決められず、各都道府県によって上限額が決められています。湯を沸かすボイラーの燃料費にメンテナンス費、毎日の掃除…維持するためにはとにかく時間とお金がかかります。さらに、コロナ禍で客足が減る中、燃料高騰が追い打ちをかけ、今や日本の多くの銭湯が存続の危機を迎えています。
旧徳山市内には最盛期で11軒もの銭湯があったそう。開業当時は、浴室がある住宅そのものが少ない時代、多いときで1日に100人以上が入浴に訪れていたと聞きます。その後、時代の移り変わりとともに、各家庭に内風呂があるのが当たり前になっていき、銭湯は次第に姿を消していきました。
文化湯も廃業の危機にさらされた過去がありました。2012(平成24)年、美和子さんが首の骨を折る大ケガで入院することになったのです。茂さんは、病室の隣の部屋で息子の妻である伊都子さんに土下座して、翌日からの銭湯の営業をお願いしたといいます。
「困る人が出てくるから、突然やめるわけにはいかない。義父は徳山最後の1軒としての使命感をもっていたようです。こんな大変なときにと最初は驚きましたが、これまで頑張って続けてきた義父や義母の思いを踏みにじるわけにはいきません。この銭湯をあてにして来られる人々のために、なんとかして引き継いでいこうと決めました。当時は何もわからない状態。恐る恐るボイラーに点火して、ドキドキしながら番台に座ったのを覚えています。」
懐かしそうに当時を振り返る伊都子さん。その語りからは、茂さんと美和子さんの思いを心から大切にしている様子が伝わってきます。


画期的なナノバブルの水素風呂・炭酸風呂
長い歴史を歩み続けてきた文化湯。続けていくためには、老朽化した設備をなんとかしなくては…。そこで、代替わりを機にリニューアルを決意。2017(平成29)年、もともと現場監督をしていた保さんが中心になり、脱衣所の改装や浴槽のタイル割りなどを行い、昔ながらの風情を残しつつ快適な空間をつくりあげました。お湯は地下から汲み上げた井戸水を沸かすスタイル。さらに、他の銭湯にはない設備をと、2018年には男湯・女湯それぞれに水素ナノバブル、炭酸ナノバブルの風呂とシャワーを新設。浴槽の湯は、曜日によって水素ナノバブル、炭酸ナノバブルが入れ替わります。ナノバブルにすることで、浴槽内に滞留する時間が長くなり、水素、炭酸効果を十分に発揮。水素は角質を除去して肌や髪をつやつやに、炭酸は血行促進に効果があるといわれています。入浴中はお湯がやわらかくてリラックス、入浴後は肌がすべすべ、体はぽかぽかに。この体感がスゴいと評判で、電車やタクシーに乗って遠方から訪れる人もいるほどです。

有機栽培・無農薬のブルーベリーを使った
スムージーやマフィンも販売

文化湯にはもう一つ、他の銭湯にはない特徴があります。それは、保さんが27年前から須々万で栽培を始めたブルーベリー。目の調子が悪かった母の美和子さんに「目に良いらしいから」と栽培を勧められ、ホームセンターで買ってきた5本の苗木から始めたのがきっかけです。
「最初は思ったように栽培できませんでした。でも、実ったブルーベリーを食べて見たら、すごくおいしかった。そこからもっとたくさん育ててみたいと火がつきました。」
試行錯誤を繰り返した結果、今では5000平方メートルの土地におよそ80種類、500〜600本を育てるほどになりました。1本の木からとれる実は7kg前後。6月から9月にかけて収穫されます。ブルーベリーの粒は大きく、ジューシーで香りが際立ちます。うまく剪定をすれば500円玉サイズの大粒がとれることもあるそうです。
「完全無農薬、有機土耕栽培のブルーベリーです。何よりも大変なのは草引き。放置しておくと日陰になり、虫がつくので手入れが欠かせません。」
最初は銭湯の常連客に配っていましたが、「とてもおいしいのでぜひ販売してほしい」という声を受けてブルーベリーの販売をスタート。たくさん収穫できるとジャムに加工して販売を始めました。さらにリニューアルを機に、店外からも買えるように、番台の奥に加工場やショーケースを設けました。
さらに、彩さんと舞さんが加わってからは、ブルーベリースムージーやマフィンなどの加工品も販売するようになりました。今後は、自家製のアボカドやヘーゼルナッツも活用する予定なのだとか。それぞれの特技を生かしながら、アイデアを持ち寄って銭湯経営を行っている高原さん一家。夢はどんどん広がっています。

03.インタビュー


文武両道を貫いた学生時代
地域の人々の心と体をやさしく温め続けてきた「文化湯」。この銭湯を両親と一緒に切り盛りしている双子の彩さんと舞さんは、パッと見では見分けがつかないほどそっくりな美人姉妹です。お二人は周南市でどんな幼少期を過ごされたのでしょう?
彩さん
「ピアノや絵画教室、ダンスなど、いろいろな習い事を経験させてもらいました。中でも大学時代まで続いたのが卓球です。もともと父が卓球をしていたこと、小学生のときに仲が良かった友達が卓球で全国大会に出場したのを知り、『私も出てみたい!』と思い、スポ少に入団して本格的に習い始めました。」

舞さん
「姉と一緒に卓球を習い始めました。最初は遊び感覚でしたが、その面白さに目覚めて全国大会を目指すようになりました。」中学3年生のとき、卓球で有名な高知の土佐女子中学高等学校に二人揃って進学。全国大会出場を目指して練習を重ねました。高知工科大学でも卓球部に所属。二人とも学業と部活を両立するハードな日々が続きました。
親元を離れても一緒なら心強い。勉強にも、好きな卓球にも打ち込めるベストな環境だったようです。お二人は全国大会で優勝を果たすほどメキメキと力をつけていきました。

8年間を高知で過ごしたお二人。舞さんは、大学を卒業後、神戸に本社を置く製菓会社に就職し、東京支社に配属。都会での暮らしが始まりました。
舞さん
「好きなお菓子を仕事にできる嬉しさの反面、見知らぬ土地で一人暮らしをする心細さがありました。さらに、新型コロナ感染症の流行をきっかけに山口に帰りたいと思うようになり、2020年にUターンしました。」
彩さん
「やっぱり生まれ育った場所がいいなと思い、大学を卒業後、周南市に戻り、実家から通える地元の銀行に就職しました。」
いつもお二人の心の片隅には、故郷・周南市がありました。


銭湯を守ることが双子共通の目標に
Uターンしたことをきっかけに、家業である「文化湯」の仕事を手伝うようになった舞さん。彩さんも銀行を退職し、日替わりで番台に座るようになりました。
彩さん
「小さい頃から番台に座る祖母の姿を見て育ちました。高知に行ってからは、母に代わり自分も手伝うようになるのかなと漠然と考えていました。」
舞さん
「何かしらの記念日には「文化湯」の前で家族写真を撮るのが我が家の流儀。家族の歴史とともにいつも「文化湯」がありました。」
お二人にとって「文化湯」を支えていくことは自然な流れ。思い出の場所を守ることは義務ではなく、いつしか愛着へと変わっていったようです。
彩さん
「銭湯は自分の都合で勝手に休めません。健康管理も大事な仕事のひとつです。浴室の掃除は体力勝負。毎日汗だくになりながら入念に掃除します。」
中学・高校・大学と皆勤賞。卓球で鍛えた体と心の強さが生かされています。

家族写真

そんな「文化湯」を楽しみに、毎日開店の1時間前から待っている常連客もいます。
彩さん
「子どもの頃から知っている常連のお客さんは家族のような存在です。久しぶりに私たちを見て『大きくなったね』と優しく声をかけてくださったので、すんなりと溶け込めました。」
舞さん
「ここのお風呂に入ってお友達とおしゃべりをするのが、毎日の日課になっている方もいらっしゃいます。お客さん同士で仲良く世間話をされている姿を見ると、こちらまで嬉しくなります。」
銭湯は単に体をきれいにするところだけではなく、地域の人々にとって大切な役割を果たしている様子です。


若い感性を取り入れた新たな取り組み
「文化湯」には他の銭湯にはない取り組みがあります。それは、父・保さんが育てる無農薬・有機土耕栽培のブルーベリー。これを使った焼き菓子やドリンクも販売しています。
舞さん
「昔からお菓子づくりが好きでした。製菓会社で学んだ経験を生かして、いつか自分のお店が出せたらいいなと思っていたので、夢がかなってとても嬉しいです。『ブルーベリーを使ったジュースを飲んでみたい』『お菓子も作ってみたらどう?』というお客さんからのリクエストに応えるうちに、どんどんメニューが増えていきました。」
彩さん
「ブルーベリースムージーは水素水入り。注文が入ってから作るので、いつでも出来立てのおいしさを楽しんでいただけます。お風呂でさっぱりした後、体に良いものを飲んで、元気になってもらいたいです!」
舞さん
「マフィンは約10種類。ブルーベリーは瞬間冷凍させたものを使っています。生のブルーベリーを使用するよりもうまく焼き上がるんです。抹茶やほうじ茶マフィンには、きび糖で作った自家製あんこや砂糖を使っていない発酵あんこが入っています。季節の野菜や果物を使って、できるだけ体にいいものを提供したいと思っています。」
季節ごとに新メニューが登場するので、訪れる度に違った味が楽しめそうです。


さらに、異業種とのコラボなど、新たな取り組みもスタートしています。
彩さん
「もともと銭湯を利用されていたセレクトショップ『ロータスリーフ』の店長さんが、コラボTシャツを提案してくださいました。店のロゴや地図の図案をあしらったレトロな雰囲気に仕上がっています。今年5月に売り出したのですが、既にショップでは完売。文化湯も残りわずかとなり、追加注文し、予想以上の反響に驚いています。」

舞さん
「銀南街の『ジェラテリア クラキチ』さんとコラボしたブルーベリージェラートも販売しています。老舗和菓子店『水木菓子舗』さんとコラボした「ブルーベリー大福」や「ブルーベリー淡雪」も販売中です。これからさらにつながりを増やして、新しいことに挑戦していきたいです。」
若い感性が加わった今後の展開にますます目が離せません。

最後に、お二人に周南市の魅力や好きなところを聞いてみました。
彩さん
「定番ですが、周南コンビナートの夜景はきれいですよね。特に、晴海親水公園から眺める工場夜景は最高! 友達と見に行くこともあります。卓球の練習帰りに眺めた『周南冬のツリーまつり』も心に残っています。」
舞さん
「10年ぶりに戻ってきて、JR徳山駅周辺が整備されているのに驚きました。『スターバックスコーヒー』や『蔦屋書店』もできて活気のある雰囲気になり、県外の友達も呼びやすくなりました。それに、初めての人でも気軽に話せる空気感がある。たわいのない会話に、ほっこりしたり、元気をもらえたり…人が親切であったかい印象があります。海や山が近くにあり、カフェもたくさんあるので、若い人も住みやすいと思います。」

彩さん
「駅前の再開発にも期待しています。新たな人の流れが生まれることで、古いまちにも興味をもち、『銭湯って何?』『このまちにまだ残っているんだ』『入りに行ってみようかな』と思ってもらえたら嬉しいです。」
舞さん
「お菓子をきっかけに、若い人にも銭湯の良さを知って身近に感じてもらいたいです。みなさんからアイデアをいただきながら、できるだけ長く続けていきたいと思っています!」

最初こそ見分けがつかなかった美人双子姉妹ですが、お話していると微妙に性格の違いが見えてきました。「文化湯」を訪れた際には、どちらが彩さんでどちらが舞さんか、よーく目を凝らしてみてくださいね。
そして、来年「文化湯」は70周年という節目の年を迎えます。古きよき日本の銭湯文化を絶やさないためにも、みなさんもぜひ「文化湯」に足を運んでみてください!



04.関連リンク

記事:小野 理枝 / 写真:川上 優
執筆時期:2022年7月
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