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中島屋酒造場 12代目当主 中村 信博さん

酒造り一筋200年。記憶に残る「濃い味」を追求する若き当主

中島屋酒造場 12代目当主 中村 信博さん
01.ヒト

1988年12月、周南市生まれ。大学進学を機に上京。東京農業大学応用生物科学部醸造科にて酒造りを中心に学ぶ。卒業後、山形県の酒蔵で2年間の修行を積み、2013年に帰郷。実家の中島屋酒造に入社。2020年、父・中村佑治郎さんの後継として12代目当主に就任。繁忙期には10人の従業員を束ね、父と共に酒造りの工程を監督する。プライベートでは家族との時間も大切にする一児のパパ。

02.モノとコト

今回ご紹介するのは、周南市を代表する老舗の酒蔵、中島屋酒造場です。場所は永源山の麓、神代川と富田川の合流地点にあたります。良質な井戸水を仕込み水として、江戸時代からおよそ200年にわたり、酒造りの伝統が脈々と受け継がれてきました。

200年の歴史と伝統を守る

中島屋酒造場は、1823(文政6)年の創業。江戸時代末期に建てられた主屋のほか、明治から大正時代にかけて建てられた5棟の酒蔵から構成されています。そのうち明治時代に建てられた2棟を、県道の拡張工事のため、2021年11月に移築改修を行いました。曳家(ひきや)という技法を使って、建物を解体せずに、そのままの状態で移動しました。

酒造りの命ともいえる麹造りを行う麹室(こうじむろ)を、2021年の改修にあわせて新築したばかり。秋田杉を全面に使用して湿度を調節し、麹にとって最適な環境を整えています。

新旧入り混じった酒蔵で造られるのは、人生の節目に欠かせない酒として昔から地元で愛されてきた「寿」、すっきりとした味で飽きのこない「中島屋」など。個性的な銘柄が並びます。その中でもひときわ異彩を放つのが、伝統的な生酛(きもと)造りによる「カネナカ」です。そもそも、生酛造りとはどんな製法なのでしょう?

 

昔ながらの生酛造りによる「カネナカ」

日本酒の原料は、米、米麹、水ですが、それらを混ぜ合わせるだけでは日本酒はできません。日本酒を造るための土台となる「酒母(しゅぼ)」を造る必要があります。酒母は文字通り、お酒を生み、育てる母のような存在。この酒母のはたらきによって大量のお米をスムーズに発酵させることができます。酒母はとてもデリケートな性質で、雑菌が入るとすぐに死んでしまいます。そこで活躍するのが乳酸菌です。乳酸菌がつくり出す乳酸によって酒母を酸性にして、雑菌が繁殖しにくい環境に保つのです。

現在、酒母の主流となっているのは、乳酸を加える「速醸酛(そくじょうもと)」で、およそ2週間で完成します。それに対して中島屋酒造場が手掛ける「カネナカ」は、酒蔵に生息する天然の乳酸菌を取り込む「生酛」のため、酒母を造るのにおよそ1カ月間の期間を要します。

でも、どうしてそんなに手間と時間のかかる生酛造りに挑むのでしょう? その理由を、12代目当主の中村信博さんにお聞きしました。

「2005年、父の代に造り始めたのが『カネナカ』です。当時は焼酎ブームの真っただ中。なかなか日本酒が売れなかった時期でした。そこで、打開策として造ったのがこのお酒です。江戸時代から続く伝統的な製法『生酛(きもと)造り』を復活させ、より深みと飲みごたえのある“濃い酒”を追求しました。さらに、瓶のまま蔵の中で1年以上熟成させることで、旨みやふくらみのある酸味が増し、熱燗にも対応するコシの強さが生まれます。フルーティーなお酒が好まれる近年のトレンドとは逆の方向ですが、うちの蔵らしいお酒に仕上がっていると思います。」

 

世界的に権威ある品評会で3年連続受賞

「カネナカ」ブランドは、世界最大規模のワイン品評会インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)の「SAKE」(日本酒)部門で3年連続の受賞。2019年は純米酒で金賞、2020年は純米酒で最高賞であるトロフィー賞、2021年は古酒で最高賞に準ずる地域トロフィー賞受賞を果たし、国内のみならず海外でも評価を高めています。

古酒部門で受賞した銘柄は『カネナカ 生酛純米大吟醸 古酒』。「日本酒は呼吸をしながら生きている」という意味合いと、長期熟成による味わいの変化を楽しんでほしいという思いを込めて「刻悠(こきゅう)」と名付けられました。

古酒は、長期間熟成することで色や香り、味わいの変化を楽しめるお酒です。熟成の期間は酒蔵や銘柄によってさまざま。一般的には3年熟成させれば古酒といわれますが、中島屋酒造場では5年以上のものと定義しているそうです。

「日本酒は栓を開けると劣化が進むと思われがちですが、ワインのように一定期間熟成させることでおいしくなるものもあります。熟成には波があり、年月とともに味わいの変化を楽しむこともできます。そうした未知数の面白さがあるのが古酒の特徴です。違う味わいも楽しみたいな、と感じたときには、ご自宅で追熟させてみてください。新しいおいしさが花開くかもしれません。」

 

よりおいしく味わうためのコツ

生酛造りならではの旨みをもつ「カネナカ」。気になるのは料理との相性です。

「味の濃い料理にも負けないコクがあるので、ハンバーグやステーキなどの濃いソースとの相性も抜群です。旨みと旨みの相乗効果で味わいがより深くなります。ゴルゴンゾーラにハチミツをかけたものとも合いますよ。」

伝統的な作り方の日本酒なのに、洋食にも合うなんて意外です!

せっかくなので、おいしい日本酒の選び方、おいしく飲むコツもお聞きしてみました。

「酒は嗜好品。人それぞれに好みは違います。また、一言で辛口といっても、アルコール度数が高い酒、酸味が強い酒、後味がスッキリした酒など、人によって感じ方もさまざま。酒によって適温はありますが、冷えた状態だと味を感じにくくなるので、常温でご自身が『おいしい』と感じられるものをおすすめします。悪酔いしないために、お酒に対して2倍の量の水を飲むことをおすすめします。アルコールを分解するためには酸素も必要なので、人との会話を楽しみながらゆっくり味わってくださいね。」

この方法を取り入れれば、より長くお酒を楽しむことができそうです(笑)。みなさんも参考にしてみてくださいね。

03.インタビュー

創業200周年を迎える中島屋酒造場。父親と一緒に蔵を支える12代目・中村信博さんに、蔵を継いだ背景や酒造りに込めた想い、周南市の魅力についてお話をうかがいました。

 

酒造りは当たり前の光景

中村さんに会うために中島屋酒造場を訪れたのは新米の季節。本格的な日本酒の仕込みを前に、酒蔵はひっそりと静まりかえっていました。

「主屋が住宅兼店舗なので、昔から酒造りは生活の一部でした。子どもの頃は、友達と酒蔵でかくれんぼをしたり、屋根の上を走ったり、よくここで遊んでいましたね。だからといって大人に叱られることもなく、恵まれた時代でした。」

広い敷地は子どもたちの格好の遊び場だったよう。近くにある永源山公園(現在は「TOSHOPARK永源山」)にもしょっちゅう遊びに出掛けていたそうです。

「この前、我が子と一緒に久々に永源山公園に遊びに行きました。公園プールもゆめ風車も全然変わっていない。むしろ昔に比べてきれいに整備された印象です。周南市は公園や動物園など、子どもを連れて行く場所が多いですよね。改めて恵まれた環境で育ったことに感謝しています。」

 

周南市の誇りは、地域を支える人々

高校を卒業するまで周南市で過ごした中村さん。周南市のシンボルとして思い浮かぶのは、東ソー株式会社や株式会社トクヤマの巨大な煙突だそう。

「小さい頃から煙突から立ち上る白い煙を眺めてきました。この辺りには“煙突から出た煙が川崎観音の方へ(北へ)流れると雨が降る”という言い伝えがあるくらい身近な存在。実際、よく当たるんですよ!」

「川崎観音」は安産と母乳の観音様で知られる観音様です。毎月17日の縁日にあるお接待は、明治時代から延々と続いているそうです。

「お接待の日は地域の人々が赤飯でもてなしてくださいます。そのほか、私たちの酒蔵のある新南陽地区では、山﨑八幡宮の本山神事のような伝統的なお祭りやJR新南陽駅周辺で開催される『サンフェスタしんなんよう』のような賑やかなイベントなどがあります。子どもの頃は気づきませんでしたが、そうしたお祭りやイベントを支えているのは地域の人々なんですよね。」

中村さんが感じる周南市の誇りは、ボランティア精神に溢れる地域の人々のようです。

 

本格的に日本酒造りの道へ

東京の大学で醸造の基礎を学んだ中村さん。本格的に酒造りを勉強しようと決意したのは20歳のとき。焼酎ブームが下火になり、日本酒ブーム到来の兆しが見え始めた頃でした。

「ちょうどその頃、販路開拓や情報交流の場として『やまぐち地酒維新』の取り組みが始まりました。当時、学生だった私は、東京で行われたイベントの手伝いに参加しました。そこで飲み屋の人から『酒蔵の息子なのに、酒のことを何も知らないの?』と指摘されて…。もっと日本酒のことを勉強したいと火がつきました。」

大学を卒業後、山形県の酒蔵で2年間の修行を積み、2013年に帰郷した中村さん。蔵に入り、父・佑治郎さんと共に酒造りに没頭し始めました。

「日本酒はとにかく造るまでに時間も労力もかかる。すぐに結果が出ないところが酒造りの難しさであり面白さかもしれません。だからこそ良いものができて評価されたときの喜びはひとしおです。」

 

お酒でつながるご縁を大切にしたい

中村屋酒造場の酒造りの理念は「酒中在心(酒の中に心あり)」。「飲む人(お客様)」「供す人(酒販店・飲食店)」との関わりの下に「造る人(蔵元)」がある。その想いは3つの菱で作られたロゴマークに象徴されています。

「酒造りは人ありきです。お客様はもちろん、地元の商工会議所や周南観光コンベンション協会など、地域の人々とのつながりを大切にしながら、しっかりと地に足をつけた酒造りを続けていきたいと思っています。機会があれば、周南市の事業者さんとタッグを組んで、特産品と組み合わせたギフトも開発したいですね。」

終始、穏やかな表情とやさしい口調でインタビューを受けてくださった中村さん。最後に、今後の目標についてお聞きしました。

「今や国内全体の日本酒のレベルが上がり、似たようなお酒が流通しています。だからといって奇をてらうのではなく、いかに差別化できるかが勝負。時代の流れを汲みながらも、より自分たちらしい酒造りを追求していきたいと思っています。」

 

創業200周年を機に、新商品の開発や海外展開も視野に入れているそう。淡々と、誠実に、伝統的な酒造りを守りつつ、時代にどう合わせていくかを模索し続けている中村さん。そこには、日本酒造りへの静かな情熱があふれていました。

04.関連リンク

記事:小野 理枝 / 写真:川上 優

執筆時期:2022年10月

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